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ギザ十と幽霊少女とご先祖様と組織の狗 04 毎度の事ながら、奴らが現れるのは突然だ。 例えば、部屋から出ようとドアを開いた瞬間に、何となく目線を向けた場所に、路の角を曲がった先に。 或いは、朝早くに起こされて眠気眼で大きな欠伸をした後に目を開けた次の瞬間。 奴ら『黒服』は、まるで人の意識の狭間から湧き出るかのように突然目の前に現れる。 漆黒のダークスーツに、漆黒のサングラス、ぴくりとも動かない口元は感情が欠落しているようで、冷たく虚ろな印象を他人に与えている。 いつものように現れたいつもの格好をした『黒服』、しかし俺はそこに少しの違和感を感じた。 「おはようございます、今日はお早いお目覚めですね、貴方はいつも休日は昼頃まで寝ていると我々は認識していましたが」 いつもの『黒服』と同じような無感情な話し方、しかし違う 今まで俺の前に現れていたやつと比べ明らかに声が高い、そして。 「お前、もしかして背が縮んだ?」 今までの『黒服』は俺より頭一つ分大きかったのだが、此奴は若干、俺よりも背が低い。 「人間は基本的に背が伸びる事はあっても、そうそう縮むことは無いと思いますが…」 「お前、人間じゃないじゃん、都市伝説じゃん」 「『もと』人間の、『半』都市伝説です」 「あんま変わらないだろ……、しかし、だとすると今までの奴とは別人か? 前の奴はどうした」 「ええ、その事で今日は寄らせていただいたのです、実は前担当の者が現在療養中でして、貴方の担当が私に移り変わったのでその報告を、と」 「療養中……?」 何か嫌な予感がする。 「はい、昨夜、謎の都市伝説が突如現れ、我々『組織』に宣戦布告をし、襲いかかってきたのです、その強さは凄まじく、一撃で我々『黒服』を消滅させ、手に持った刀の一振りで山すら粉砕させてしまいました」 「…………」 「どうやら、新種の伝説のようで未だ正体は不明ですが、妙な仮面に派手なマフラー、近未来的なデザインのスーツを着用していた事から、特撮やアニメ、ゲームの類から派生した者だと我々は考えています」 嫌な予感的中、そして『組織』の推測、的外れすぎワロタ どう考えても特撮でもアニメでもゲームでもなく、俺と糞餓鬼とロリ婆の共同黒歴史ノートから発生した、中二病設定の太郎さんです、本当にありがとうございました。 前ページ次ページ連載 - ギザ十と幽霊少女とご先祖様と組織の狗
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以前、日焼けマシンの契約者が退治した、マッドガッサー しかし、それが新たに出現した、と言う情報が入った ここは、学校町 都市伝説が生まれやすい場所 新たな個体が生まれた、ということだろう マッドガッサーは、男性のいない、女子供だけの家を狙う …よって、はじめに心配になったのは、はないちもんめの契約者だった 「それで、忠告に?」 「はい」 幸い、と言うべきか否か 連絡に行こうとしていたところで、下校途中の彼女を見つける事ができた 並んで歩きながら、ざっとマッドガッサーについて説明する 「…とりあえず、無闇に玄関を開けなければいいのね?」 「はい。それと、遭遇したら出来る限り、逃げ出すように」 わかったわよ、と答えてくるはないちもんめの契約者 毒ガスの恐ろしさは、以前遭遇した事件で身にしみているのかもしれない …そうやって、話している、最中だった 「っ!あれ!」 「……!」 黒服と、はないちもんめの、前に ガスマスクを被った、不審者が姿を現した すちゃ!と マッドガッサーが、ガスの噴射口を「はないちもんめ」の少女に向けた ……不味い!? いきなり遭遇してしまったから、対処法は用意していない 相手の毒ガスがどれだけの殺傷力を持っているかはわからないが…少女がまともに毒を喰らっては、不味い 「っきゃ!?」 少女を、近くにあった電話ボックスに押し込む これだけでも、ガスの攻撃はある程度防げるはずだ 直後、マッドガッサーは、毒ガスを噴射してきて 黒服は、それをまともに吸い込んでしまった 「く……!?」 ぐらり、視界が暗くなり …黒服の意識は、そこで一度、途絶えた 「…ねぇ、ちょっと!」 「ん……」 揺さぶられて、意識が戻る マッドガッサーの毒ガスにやられて、気を失っていたようだ とりあえず、体は動くようだが… 「…すみません。ご無事ですか…」 そう、はないちもんめの契約者に声をかけながら、起き上がる ぷるんっ ……… ぷるん? 起き上がった自分の体に、若干の違和感を感じ 嫌な予感を感じながら…黒服は、自分の体を見下ろした …そこには 男である自分には存在しないはずの、豊満なバストが存在していた ……これは、どう言う事なのか 「…すみません。私が気絶している間に、一体何が?」 「……あなたが毒ガスを喰らって倒れたのを見て、マッドガッサーはどこかに逃げたわよ。その後、あなたの体に変化が起きて…」 …なるほど 毒ガスは毒ガスでも、性別転換と言うふざけた効果をもった毒ガスだった訳か 黒服は、小さくため息をついた 致死性の毒じゃなかったから、良かったものを… まったくもって、迷惑な存在である 後で組織に連絡して、早めに捕縛・もしくは退治するように伝えた方がいいかもしれない 「…いやに冷静ね」 「一応、対処法はわかっていますから」 毒を喰らってこうなったのならば、毒を浄化すればいい いつも持ち歩いている、ジェラルミン製の鞄を開ける 確か、中に「ユニコーンの角の粉末」が… ……… …………… おや? 「どうかしたの?」 「…困りましたね。ちょうど、ユニコーンの角の粉末だけ、ありません」 河童の妙薬は、どちらかと言うと病気の浄化だ、毒の解毒の効果はあまり見込めない よりによって、ユニコーンの角の粉末だけ、持ち合わせがないとは 後で、組織で在庫を確認しなければ ごそごそと、黒服はスーツのポケットを、いくつか探る 水晶でもトパーズでもヘマタイトでもいい 何か、毒の浄化に使えそうなパワーストーンは… ………… 「…もしかして。毒を浄化できそうな物が、偶然にも全部なかった、とか?」 「……どうやら、そのようです」 はないちもんめの契約者の言葉に、黒服は苦笑した なんと言う、不幸な偶然 これでは、元の姿に戻れない 「まぁ、幸い私は都市伝説から。万が一組織本部にユニコーンの角などの在庫がなくても、一週間もてば毒は排出されて、元に戻るでしょうが…」 「…つくづく便利ね、都市伝説って」 確かに、その通りなのだが …まいった 少し動かしてみるが、女性の体は酷く不便だ なぜか胸は必要以上に重たいし、元々、男性としても力強い方ではなかった自分の体は、ますますか弱くなってしまっているようだ これでは、都市伝説と遭遇したさい、足手まといになってしまう確立があがってしまう 担当している都市伝説の契約者に戦わせる以上、自分だけ戦わない、と言うのは問題だと思うのだが… 本当に、もし万が一本部にもユニコーンの角の在庫がなかったら、自分は今まで以上に後ろに下がらざるを得ない その状況に、黒服は憂鬱になる 「…とにかく、あなたが無事で、良かったです」 そっと、はないちもんめの契約者の頭を撫でる黒服 はないちもんめの契約者は、黒服の身に起こったこの現状に、どう反応したらいいのかわからないのだろう 酷く微妙な表情を向けてきているのだった 前ページ次ページ連載 - とある組織の構成員の憂鬱
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【ある秋の話】 ゾクッ・・・ (裂邪 おいお前ら! 今のわかったか!? (シェイド 何ナノダ、コノ禍々シイ「エナジー」ハ・・・ (バク ・・・「夢の国」だバク。 (ウィル いよいよ動き出したみたいでい! (ミナワ 大変ですよご主人様! 「夢の国」といえば、ものすごく強い都市伝説の一つです! (ウィル 強ぇなんてモンじゃありやせん! ありゃ「地獄」そのものだぜい! (バク 『パレード』に巻き込まれたら最後、もうこの世には戻ってこられないバク! (シェイド ドウスル裂邪? 戦イニ出向クカ? (裂邪 慌てるな! (裂邪 他の契約者が既に動いている。 厄介事には巻き込まれたくない。 (四天王 他力本願!? こんなことが数回あったそうな。 【マッドガッサーの話】 (裂邪 なんか、男が女になったり、女が男になったりする事件が相次いでるってきいたんだが。 (ウィル そいつぁ「マッドガッサー」の仕業でい。 (ミナワ あ、私もそれ聞いた事あります。 会ったことはありませんけど。 (シェイド 何者カガソウイウ効果ノアル「ガス」ヲ撒キ散ラスラシイナ。 (裂邪 この町は本当に都市伝説だらけなんだな; (バク あと、女になるガスを女があびたら、ヤらしい気持ちになるそうだバク。 (裂邪 へぇ、ヤらしいねぇ・・・ (裂邪 ミナワ、ちょっと出かけよう。 (ミナワ へ? どこへですか? (シェイド 待テ貴様、犯罪ダゾ? 【団体さんの話】 (ミナワ えっ!? ご主人様、今何と仰いました!? (シェイド 「組織」モ「首塚」モ知ラントハメデタイ奴ダナ・・・ (裂邪 え? なになに? 俺そんな悪いことしたの? (ウィル 「組織」ってのは、都市伝説専門の警察みたいな感じだと思って下せえ。 (バク 「首塚」は平将門が率いている「組織」の敵対勢力のようなものだと聞いたバク。 (ミナワ この町では他にも「怪奇同盟」とか、かなり多くの団体があるんです。 (裂邪 へ~、結構あるんだな。 (裂邪 ・・・もしかして、俺の世界征服の夢って厳しいのか? (四天王 かなり。 【油断ならない話】 (裂邪 「一に褒められ二にふられ、三に惚れられ四に風邪」・・・って知ってるか? (ミナワ えっと・・・確か「くしゃみ」、でしたよね? (裂邪 あれって都市伝説か? (シェイド 原義上ハ、ソウナルダロウナ。 (裂邪 ふ~ん・・・・・・ (四天王 ドキッ! (ミナワ ご主人様、これ以上はホントにお体がもちませんよ!? (ウィル 正気になってくだせぇ旦那ぁ! (バク 少しは自分の事も考えるバク! (シェイド 今度コソ貴様ヲコノ手デ消スゾ!? (裂邪 な、何だよお前ら!? 【お化け屋敷 1】 (担任 ―――というわけで、このクラスの文化祭の出し物は「お化け屋敷」に決定しました。 (一同 イェ~イ! (担任 内容はどうするんだ? (男子A 人魂! (女子A 死神! (男子B 化け物! (担任 いやもっと現実的なものにしろよ; (裂邪 先生、今出た奴全部用意できますが? (男子C さっすが裂邪! (女子B 黄昏クンかっこいー! (担任 じゃあ頼むぞ黄昏。 (裂邪 ―――ということで、お前達に協力してもらうことになった。 (ウィル お安いご用でい! (獏 待てこらクソ主ィ! (シェイド オ前ニトッテ我々ハ何ナノダ!? (ミナワ 皆さん大変そうですね・・・; 【お化け屋敷 2】 ボッ・・・ (男子A うわ! 人魂!? コロシテヤル・・・ (女子A キャー! 死神!? グアォ~! (男子B うお! 象の化け物!? (男子A お前スゲェな! でもどっからあんなの持ってきたんだ? (裂邪 トップシークレットだ。 (獏 (あんのヤロォ・・・) (シェイド (イツカアイツヲコロシテヤル・・・) 残念な事に校長にボツられたそうな ...Fin 前ページ次ページ連載 - 夢幻泡影
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#blognavi 都市伝説で三椏4が揃いましたw 今度は3枚中2枚、4になりました。 というわけで陰陽は断片集め終わりました。 ・・・陰陽符を買える財力が持続出来るか疑問です。 ちょっと業務連絡を。 wikiでblogを書くためにはコチラ をご覧ください|・ω・)ノ このblogはwikiモードの構文が使えるみたいです。 blogの記事内でリンクや画像を貼りたい場合は wikiページの構文 を使って出来ます。 カテゴリ [真人] - trackback- 2005年06月17日 18 02 06 おぢさんには、ちんぶんかんぷんだぉ。 -- カムイだぉ。 (2005-06-17 20 22 39) 名前 コメント #blognavi
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合わせ鏡のアクマ 27 「ネックと」 「RBの」 「「「ラジオde都市伝説ー!!」」」 「司会は私、ネックおばさんと」 「秋祭り編に登場したい、RBがお送りする」 「・・・で、久々のこのコーナー。みんな覚えてなさそうなのに何故今?」 「無論、書き手の気まぐれだ。それでは書き手からの要望でアンケートをとるぞ」 「はーい。今回のラジオde都市伝説は、書き手から読んでくださっている皆さんへのアンケートです」 「わー、ぱちぱちぱちー」 「その内容は『姫さんの方向性をチートキャラとしてよいのかどうか』だ」 「普段から父親に暴力を振るう姫さんですが、どうも最近その頭角を現してきたらしいんですよ」 「あ、もちろんそのほとんどが作者の脳内でですよー?」 「そこで、これまでのヒロイン役に加えてチートキャラのポジションを与えてみたいらしい」 「まぁ・・・そのチートもどれくらいのレベルかによるわよねぇ・・・」 「書き手としては『禿の黒服と渡り合えるが、スタミナ切れで負ける程度』にしたいらしい」 「強いわよ!新世界の神になりえる人と渡り合うってどれだけチートなのよ!!」 「大きくでましたねー」 「それくらいでないとチートとは呼べんだろう・・・」 「で、でももちろん禿の黒服さんみたいにギャグ要員としてのチートなのよね?」 「・・・・・・・・・」 「え、なにその沈黙は。おーい、RB?」 「それではラジオde都市伝説!またいつの日かっ!!」 「あ、コラ逃げるな!待ちなさぁああああい!!」 「・・・あ、書き手からの手紙が置いてかれてます。えーっと・・・ 『姫さんって最近すっかりギャグ要員だから、 チートキャラとして戦闘させたいなーって思うわけよ』 ・・・・・・・・・ そ、それではラジオde都市伝説!また次の機会にお会いしましょう!!」 * このアンケートの結果・・・・・・・・・ * 南区を一人の女子高生が歩いている。 彼女は時計を見ると、なにか時間が迫っていたのか小走りになって路地裏へと入っていった。 すると、狭い路地裏に黒い服を着た男が二人立っていた。 女子高生は気にする様子もなく男達を避けて走っていく。 それを見た男は彼女の背中へ向けてその異常に長い腕を伸ばして、捕まえようと・・・ 「バーカ、単純すぎるわよ」 女子高生はクルリと振り向くと伸ばされた腕を掴み・・・ 「んっ、そぉい!」 思いっきり引っ張った。 引き寄せられてきた黒服に、女子高生が蹴りをいれる。彼女はよろめく黒服から距離をとると 「ダァッ!」 助走をつけて渾身の踵落としを決める。 崩れ落ちる男の後ろからもう一人の黒服が異形を隠そうともせずに向かってくるが 「せいっ」 黒服の足が払われる、そのまま彼女は体を回転させると 「うりゃっ!」 黒服の頭と思われる部分へ回し蹴りを決めた。 蹴りの勢いで壁に叩きつけれれた黒服は、そのまま動かなくなる。 「ま、こんなもんよね」 靴をトントンと踏み鳴らすと彼女は路地裏を出て行く。 「やっぱり妹ちゃんと契約してから、××みたいに体が少し強くなったみたいね」 『怪奇同盟』からは器が小さくて影響が出てしまったのだろうとか言われたが、これはむしろ好都合だ。 「なにせ、アイツや妹ちゃんの手を煩わせなくてもこうやって自衛できるわけだし♪」 そう、彼女は戦う力を手に入れた。別に人間でなくなるつもりはないが、これくらいならアイツも気づくまい。 「ほーんと、なんか得したきぶ、ん・・・・・・あ」 路地裏から出た先で彼女を待っていたのは、黒い影の集団であった。 「・・・えーっと、もしかして私今すっごく・・・ヤバイ状況?」 迫ってくる黒い影の集団に、冷や汗を流さずにはいられない女子高生こと姫さんであった・・・ 前ページ次ページ連載 - 合わせ鏡のアクマ
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暗い暗いその部屋に、灰色のコートを着た男が帰ってきた 尾なしの犬を引き連れ、部屋に戻った男は……部屋の中にいた先客に、機嫌悪そうな表情を浮かべる 「……何の用だ」 「つれないですね。私は、あなたの協力者だと言うのに」 その女は、男…朝比奈 秀雄に、楽しげにそう、笑いかけた 白い髪が、ぱさぱさと揺れている H-No.9を名乗る、「組織」の黒服だ もっとも、黒いスーツの上に白衣を纏うと言うやや珍妙な出で立ちのせいで、「組織」の黒服と呼ぶには、やや違和感も覚える しかし、彼女は間違いなく「組織」の黒服であり…朝比奈に、「都市伝説との契約書」を「組織」から持ち出し、与え続けた女である とは言え…最早、その事実は「組織」にバレてしまった 消される前に「組織」を抜け出し、その際に持ち出してきた「都市伝説の契約書」が全て使い尽くされたならば…この女は、朝比奈にとってもはや用無しである こちらの事情を知る相手は出来る限り少ない方がよい 使えなくなった駒は、消すに限るのだ 「用があるのなら、さっさと言え。化け物が」 「まぁまぁ、そう言わずに……どうでしょう?私の契約都市伝説の力、あなたの計画に役立てるよう、使って差し上げましょうか?」 形のいい唇を釣り上げ、重たそうな胸を支えるように腕を組みながら、そう言って来たH-No.9 …確か、この女の能力は… 「…「病は気から」、か」 「そうです。この力を使えば……あなたがその権力を欲する家の今の当主の、三日以内にその命、終わらせる事ができますよ?」 「……余計な事をするな」 低く、そうH-No.9に告げる朝比奈 彼の不機嫌な思考に連動するように、クールトーが唸り声を上げる 「あの男に、今の状態で死なれては困る……翼が、次期当主に着く事を、確定させるまでは」 「他の当主候補を全員殺してしまえばいいのでは?」 「それでは、世間から不審の目を向けられる。それでは意味がない。なりふり構わぬのなら、それでも良いが」 冷酷に、そう口にする朝比奈 目的の為ならば、己の息子すら平気で利用する男だ かつて伴侶にした女の家族すらも、目的の為ならば容赦なく殺せる冷酷さは持っている だが、それでは、目的を達する上で、不都合なのだ だから、まだ殺さない ただ、それだけだ 「こちらの役に立つというのなら、その能力で街に不幸でもばら撒いておけ…ただし、日景の家以外にな」 「そうですか。それならば、そうしましょう」 笑い、H-No.9は部屋を後にしようとする その直前、朝比奈とすれ違い……どこか妖艶に、笑った 「…ところで。いい加減、あなたの三つ目の都市伝説、教えていただいても宜しいのでは?」 「……私が貴様を殺す事になったならば、その瞬間に知る事になるのだから、必要はない」 「………酷い人」 肩をすくめ、部屋を後にしたH-No.9 朝比奈は、忌々しげに彼女が出て行った扉を見つめた 「……化け物が………増長するようだったら、さっさと消してしまうか…?」 …いや あの能力には、まだ使いどころがある あの女が、裏切ったり、敵の手に落ちるようならば、その時に消せばいいだけのことだ 利用価値がある限りは、生かしておいてやってもいいだろう その価値がなくなるまで、使い潰してやればいい 「…しかし、コーク・ロアの兵が増えぬのは不便だな……対策を考えておくか」 兵は多ければ多い方がいい だが、所詮は使い捨てだ 使えば減るのだから、増やす方法も考えねばならぬ さて…どうしようか? 朝比奈は、どこか残酷な笑みを浮かべながら、思考をめぐらせるのだった to be … ? 前ページ次ページ連載 - 悪意が嘲う
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ゲーム王国編 第五話 【私亡確認】 初めて至村さんと出会ってから一ヶ月。 戦い方を教えてやると言われ師事していた時から約三週間。 至村さんは今日も公園に来なかった。 「何かあったのかな」 「だろうな」 「アメにも何があったかわからないの?」 「てめえと一緒に行動してる俺にわかるわけねえだろうが」 「匂いとか」 「匂いでわかんならてめえもわかるはずだ、契約者」 この三週間で『人面犬』との関係も若干変わり、『人面犬』にはアメという名前をつけた。 最初は永六輔のような声をしていたからロクスケと呼ぼうとしたんだがめっちゃ怒られた。 じゃあ浅田飴だと言うと呆れたような口調でアメでいいとのこと。だから『人面犬』のフルネームは浅田アメだ。 その代わりというか何というか、アメもこちらを契約者と呼ぶようになった。 信頼の表れと取っていいものかどうか。 「で、今日はどうする気だ?」 「別にいつも通りかな。後一時間くらい待って来ないようなら帰ろう」 「帰りに都市伝説と遭わなきゃいいけどな」 「怖いこと言うなよ……」 ちなみに、あれから都市伝説と三回ほど戦っている。 最初が『口裂け女』で、次が『トイレの花子さん』、昨日が『首無しライダー』だ。 都市伝説相手の戦い、というか喧嘩すらしたことがないもんだから怖くて怖くて仕方がない。 昨日なんておしっこチビるかと思った。……いや、思っただけであって実際に漏らしたりはしてないよホントに。いやいやマジでマジで。思わぬことが起きたらビックリするのは当たり前のことじゃん? いきなり首が無い人見たら驚くに決まってるじゃない。人じゃなかったんだけどさ。あくまで比喩的な表現でチビると言っただけであって、実際は足が震える程度だよ。そうそう、めっちゃ足が震えただけ。決して漏らしたりなんかしてないッスよ。確かに悲鳴を上げて逃げ出そうとした情けない自分を認めるけどさ、漏らすわけなんかないじゃない、嫌だなあ。それでもなんとかかんとか撃退できたんだからそのくらいどってことないよ、うんうん。ほとんどアメが戦ったことも認めるよ、遠くから石投げつける程度しかできなかったしね。それとおしっこ漏らすとは話が違うんじゃないかなあと思うわけよ。戦いの役に立ってないこととおしっこ漏らすことはイコールで結んじゃあダメなんだよ。役立たずが皆、おしっこ漏らすわけじゃないでしょ? そういうことを言いたいわけ。わかる? 「てめえは少し自衛のために戦いに慣れとくべきなんだよ」 「うーん、別に逃げれば死なないからいいんじゃない?」 ◆ □ ◆ □ ◆ 「死んだよ」 「そうか」 西区にある小さな喫茶店――江良井と錨野のふたりは奥の席に座っていた。 利発そうな少年が運んできたコーヒーを一口飲み、一息吐く。 「きみが原因なのは言うまでもないとは思うけど」 「ああ」 「あの日〈組織〉との戦いを終えた僕らがきみらの戦いを止めることが出来たのは本当に偶然だった」 「ああ」 「あの時点ですでに重傷。両手両足はもとより臓器に至っては全滅――この一ヶ月、僕らに出来たのは痛みと苦しみを取り除くだけだった」 「安らかに逝けたのか?」 「多分、きっと」 一月前、〈組織〉との戦闘が終わってすぐに、高城が自らの能力である『アメリカ村』が強制的に解除されたのを知った。 おっとり刀で駆けつけた彼らが見たものは血塗れになって横たわる新居と、顔色ひとつ変えずに立つ江良井。 高城が咄嗟に『アメリカ村』を発動させて〈ゲーム王国〉の面々を異界に匿った。 都市伝説とはいえ、イリアスも左半身をやられている。 〈組織〉の黒服をひとり屠った後の黒服の撤退までは錨野の描いた絵の通りに進んだものの、江良井の復活と参入は予想外であった。 病院へ運ばれた新居の状態は言うまでもない。 「病院に無茶を言ってまだ霊安室にいる。生前からの希望は遺体はその辺に捨てといてくれと言われていたが、法律上は流石にそうはいかない。本人の希望通り、火葬のみで結構。遺骨はぼくらが連れて行く。そこで江良井くん。きみが搬送し、きみが火葬場まで連れて行くんだ。それが新居忠を殺した男の義務だ。――嫌だとは絶対に言わせない」 いつも身に纏う飄々とした空気がない。 悲しみと怒りと別の感情と。 〈ゲーム王国〉の仲間、新居忠の死は錨野にとってどれだけのものなのか。その心中は本人にしかわからず、錨野は語らない。そして江良井も問おうとしない。 「俺は葬儀屋だ。依頼が入れば動く」 「そうか……いや、そうだったね。きみはいつも――いや、今言うことじゃないか」 自分のコーヒー代をテーブルに置き、錨野が立ち上がる。 「遺体の引き取りは今から……そうだね、準備もあるだろうから三時間後で結構。それじゃ、また後で」 それ以上何も言わず、振り返らず錨野は立ち去った。 葬儀屋という仕事に就いてから何度も見た光景。 ひとりになった者の背中――しかし、今の錨野は似て非なるものだ。 彼にはまだ仲間がいる。 対して江良井は―― ◆ □ ◆ □ ◆ 「お、元気してたか、バカ息子。一ヶ月も顔見せないから熊に食われたのかと思ったぞ」 「お蔭さんでな」 「お前のことだからどうせまーたロクでもないことに巻き込まれてるとは思ったけどよ、あんまり俺を巻き込むなよ」 「会社から電話がいったそうだな」 「当たり前だろ。従業員が連絡なしで三日も四日も無断欠席なら普通の会社なら心配するだろ」 「で、お前は何と答えたんだバカ親父」 「お尻ピリピリ病にかかりまして、しばらく入院してるんです。面会謝絶と言われてるのでお見舞いは結構です。いつもいつも愚息がご迷惑をおかけしてすみません、だけど?」 「殴られる覚悟は出来たか?」 「おいおい、父親を殴るなんてとんでもない息子だな。大体何日も無断欠勤するお前が悪い。悲しいなあ、父さんはそんな風に育てた覚えはないぞ」 「育てられた覚えもない」 「――で、若返ったのはそのゴタゴタが原因か?」 「そうだ」 「また面倒臭いことしやがって。お前はナイスミドル向けじゃないな。チョイ悪親父はブームを過ぎたかに見せかけて今まさに盛り上がろうとしてるんだぞ? この俺を中心に」 「……もう喋るな」 疲れたように頭を抱える江良井。 新居から逃げられた翌日に会社に出向いた江良井が上司から聞いたのは奇病に罹ったせいで出勤できなかったとの言葉であった。 犯人は言うまでもなく実の父。 四日ぶりに出社した日から今日まで同僚を含めて妙に温かい眼で見られたのはそのせいだった。 もっとも、都市伝説絡みで無断欠勤をせざるを得ない場合は過去にも何十回もあり、その都度父親の虚言で免れているのだが。明らかな作り話なのに未だに会社ではバレた様子がないのが不思議である。 「んで、今日は何の用だ?」 「ここ最近この町で何かおかしなことはなかったか?」 「別になーんにも。この町にしてはいつも通りさ。どこかしこで暴れる連中がいたり、表沙汰にできない人死にが出たりは日常茶飯事だ。そう言えばここ最近『山崎渉』の落書きは見ないな」 「そうじゃなく……上手く言えないが、この町がこの町じゃないようなことはないか?」 「言いたいことが良くわからねえな。今のお前が巻き込まれていることがそれか?」 「確信は持てないが」 「何かあれば〈組織〉の連中が動くだろうよ」 「動いていないから問題なんだ」 江良井と新居が戦った同日、錨野達は〈組織〉と戦っていた。 早々に撤退して以来、〈組織〉の動きはないと言う。 錨野達に対する警戒を緩めたか。 ――否。〈ゲーム王国〉建国を掲げる連中を見逃すほど〈組織〉は甘くない。 〈ゲーム王国〉と〈組織〉の間で何らかの密約が交わされたか。 ――否。穏健派ならいざ知らず、彼ら過激派は密約など交わしはしない。 共通の敵を江良井に定めたか。 ――否。〈ゲーム王国〉は江良井を敵とすればどうなるか知っているし、〈組織〉も第一級監視対象者である江良井に対して敵との認識はしない。 別の案件を抱えて手一杯の状況か。 ――否。以前姿を現したA-№102のナンバーから察するに彼が所属しているのは、たとえ〈組織〉全体が動いていても独自の行動が許されている異端のグループである。別の案件で手一杯ということはありえない。 〈ゲーム王国〉を泳がせている最中か。 そう考えるのが可能性として一番高い。 「どうでもいいけど俺が巻き込まれるのだけは勘弁してくれよ」 「文句はあいつらに言ってくれ」 「ところでよ、今度ニコ生主やろうと思うんだけどどう思う?」 「知るかアホ」 ◆ □ ◆ □ ◆ 新居の火葬が終わった後も、〈ゲーム王国〉は動きを見せなかった。 火葬に立ち会ったのは錨野ただひとり。 火葬場から立ち上る煙を見上げ、何を思ったのか。 誰も何も言わず、錨野が口を開いたのは葬儀の金額を払い終えてからだった。 「四十九日が終わり次第、ぼく達はきみの敵となる」 「そうか」 「最初からそうすべきだった。ぼく達の――いや、ぼくの覚悟が足りなかった」 錨野は語りだす。 自らの思いを、新居が骨となった今。 「この町における何者にも勝る最善は敵対しないことだと思っていた。この町は怖い。祟り神や笛吹き、寺生まれ、三国時代の猛将、魔法使い、影使いや変身ヒーロー――今では話もあまり聞かないが――最強の主婦もいる。名前を挙げればキリがないが、ぼく達は彼らとは関わらずに水面下で事を進める予定だった。だがそうはいかない。江良井卓――きみがいるからだ。ぼく達……というよりは、ぼくがこの町で何かをする上できみだけは避けて通れない存在なんだ」 「過大評価だ」 「敵にならないのであればそれでよかった。だが、ぼく達のような異分子はこの町で誰かの敵にならなければならない。それがきみなんだよ。そういう風にできているのさ。この町――あえて括弧つきで呼ばせてもらおう――『学校町』の意思によってだ」 「『学校町』の意思とやらに俺が選ばれたとでも言うのか?」 「いや、違う。彼らこそが『学校町』そのものなのさ。皆は違うと言うだろう。だが、この町の害意に対して彼らはどうして戦う? 何かを守るため? 誇りのため? そこに戦いがあるから? 与えられた任務だから? 快楽に浸りたいから? 気に入らないから? どれも違うね。彼らこそが『学校町』だからだよ。彼らが『学校町』だから彼らは戦うのさ」 「……」 「異変に対して素知らぬ態度で何も知らぬ一般人のようにただ過ごしていればいい。次の朝にはいつも通りお日様は東から昇る。きみも知っている通り、この町は国の内外問わず各機関から目をつけられている。放っておけば彼らが終わらせてくれるのにどうして自分達の手で決着をつけるんだい? 『学校町』に住む彼らには戦わないという選択肢があるのにそれを選ばないのはどうしてだい? 一般人は『学校町』に意思はないと言うだろう。本当のところはどうだかなんてぼくにもわからない。だがね、ぼくは思うのさ。『学校町』が彼らを生み出したんじゃないかってね」 「自分を守るためにか?」 「いいや。『学校町』が『学校町』であるためにさ」 町の意思。 何かの比喩でそう言う者はいるだろう。 だが錨野は本気で言っている。 錨野風に表現するならば『学校町』は己の意思を持っていると。 俄かには信じられない話だが、ありえないと江良井が一蹴しないのは江良井もまた感じているからなのか。 信じられぬことが罷り通るこの町なら意思があってもおかしくはないと。 「ハワード・フィリップス・ラブクラフトの名前を聞いたことは?」 「クトゥルー神話なら読んだ」 「彼の綴った物語の中に『ネクロノミコン』と呼ばれる書物がある」 「知っている」 「それはラブクラフトが作り出した空想上の書物さ。どんな巨大な図書館にも置いていない」 「……大英図書館にもな」 「その通り。彼は世間に想像上の本が現実に存在すると思わせることに成功した数少ない者のひとりなのさ。彼の素晴らしさはそれだけじゃない。『アーカム』に向かおうとする者だって現れた。存在しない本や町を求めてだ。彼が綴る物語により、たくさんのモノが現実味を帯びた。そう、まるで――」 「――都市伝説のように、か」 「さて、ここまで言えばぼくの目的もわかってきただろう? 『学校町』はどこにある? 千葉県? 埼玉県? それとも東京? もっと言おう。学校町は通称にしか過ぎない。いつから、誰が呼び始めたのかもわからない。じゃあ、この町の本当の名前は? 今、僕らが立っているこの場所の正確な住所は?」 今この場に存在するが世界中のどこにも存在しない町――学校町。 だからこそ錨野は括弧をつけたのか。敬意の証に。 「『学校町』は存在しない町だ。だが、ぼく達がいるこの場所は『学校町』に間違いがない」 「だからお前達は『学校町』を〈ゲーム王国〉に書き換えるのか」 「違うね」 静かに首を振る錨野。 己の高揚を隠さず。だが、強く。 「現存しない国を現存させる。存在しないものが存在した時、世界はどうなるのかが知りたい。それだけだ」 「ラブクラフトはシェアワールドという形を取ることにより己の創作物を都市伝説に近づけた。お前のしていることは――」 「――ラブクラフトの一歩先だ」 無から有を生み出す奇跡は都市伝説で行える。 それとは限りなく似ているが限りなく異なる奇跡は可能なのか。 ラブクラフトの一歩先と錨野は口にした。 彼の眼には学校町がどのように見えているのか。 「そのためにはね、江良井くん。きみはぼくの敵じゃなければダメなんだ。ぼくにとっての『学校町』はきみなんだよ。遅いと笑われてしまうかもしれないが、ようやく覚悟ができた」 正面から江良井の目を見据え、 「ぼくはきみの敵だ」 ――敵となる宣言。 対して、江良井の答えはひどくシンプルなものであった。 「そうか」 この瞬間、錨野は江良井の敵となり、江良井は錨野を敵と認めた。 老若男女区別なく、一切の容赦なく。 総ての敵を殺害する男――江良井卓が錨野蝶助を敵と看做した。 そして、物語は動き出す。 ◆ □ ◆ □ ◆ 「なあ。あんた、〈ゲーム王国〉の人間だろ?」 至村賢が声をかけられたのは陽が落ちるか落ちないかというくらいの夕方。 彼らの仲間が死に、ひとりで火葬を終えたリーダーの下へと向かう最中のことであった。 「〈組織〉所属の契約者って言えば用件はわかるな?」 やや恰幅の良い男――年齢は三十代であろうか――は口元にどこか野卑な笑みを浮かべて至村の前方に立っている。 「……用件はわかった」 「そりゃ良かった。場所はここでいいな?」 「かまわない」 「そう固くなるなよ。俺は金堂摩沙彦。能力は――自分で判断してくれ。〈ゲーム王国〉さんよ」 黒の手袋をはめる金堂。 その指先からは白い筋のようなものが見える。 「……〈ゲーム王国〉じゃない、俺は至村賢ってんだよ」 「ちなみにあんたの能力は?」 「企業秘密だ」 前方の金堂へと同じくらいの警戒心を後方にも向ける。 金堂の武器はほぼ間違いなく手袋に装備された斬鋼線だろう。となると警戒すべき都市伝説は『首なしライダー』か『ピアスの穴から出る白い糸』だ。 どちらかが囮で油断したところをもうひとつの本命での攻撃に繋がるはずだ。 微かに聞こえてくるバイクの駆動音は味方か、都市伝説か。 「俺はお前さんだけを倒せばいいのか?」 「あんたらの敵は沢山いるが、あんたの敵は俺ひとりだ。――俺の能力、見当はついたようだが甘く見てるとあっさり死ぬぜ」 「そいつは怖いな」 ゆっくりゆっくりとふたりの距離が縮まる。 金堂の射程距離がどれだけのものなのか、至村の射程距離がどれだけのものなのか、どちらも間合を計りつつ近づく。 至村の間合まであと一歩のところで金堂が動いた。 「いくぜ、至村賢!」 「来い、金ど――え、あ……」 「一丁あがり」 血も噴かず傷もつかずその場に崩れ落ちたのは至村であった。 見るまでもなく、その顔は死の色に染まっている。 あっけなく決着はついたのだ。 「ご苦労様でした」 「これで契約破棄っと」 「契約を続けなくていいのですか?」 「使いどころのない都市伝説だって説明したのはあんただぜ? こうして結果が出ただけ良しとしてもらいたいな」 「まあいいでしょう。十分とは言えませんが『志村けん死亡説』のデータが取れたのは僥倖でした」 どこからともなく現れた黒服から渡された契約書にサインし、彼が元々契約していた都市伝説との再契約を済ませる。 このためだけに本来契約していた都市伝説との契約を破棄し、『志村けん死亡説』と契約していたと知れば至村は何を思うだろうか。 〈ゲーム王国〉と戦闘後、〈組織〉がしたことは戦闘時にいた〈ゲーム王国〉の面子の徹底的な調査と監視であった。 電話の盗聴は元より、彼らが使用した通信の徹底的な監視。 彼らの能力全てを知ることは出来なかったが、彼らのメンバーは調べ終えた。 メンバーは全部で六人。うち、江良井が殺した新居を除くと五人。 その上で立てられた作戦――〈ゲーム王国〉メンバーの殺害。 金堂摩沙彦を受け持つ黒服、A-№107に割り当てられたのは至村賢の殺害であった。 A-№107が入手できたのは顔写真と名前、身長、体重――表層的な情報のみであり、何と契約しているのかは全く不明。 そこで利用したのが使いどころのない都市伝説『志村けん死亡説』である。 都市伝説の中で使い道のないものは多々存在するが、『死亡説』もそのひとつ。何しろ、使うにあたって相手が同姓同名でなければ意味がない。 だから己の担当する嘱託契約者、金堂に契約させて拡大解釈により同音異語でも発動可能にした。元から契約している都市伝説を契約破棄させたのは多重契約で金堂が飲まれるのを危惧したためだ。 「俺の仕事は終わりだな?」 「今回の報酬です」 「はいどうも。それじゃ、また何かあったら呼んでくれ」 「どちらへ?」 「風呂だよ風呂、泡風呂」 「そうですか」 「人ひとり殺した金が泡風呂一回分ってのは悲しいなあ。今度からもうちょっとイロつけてくれよ」 「考えておきましょう」 立ち去った金堂を見送ることもせず、横たわる至村の遺体を少し調べたA-№107もまた現れた時と同じように姿を消した。 ただ遺された至村を見つけたのは他の誰でもない江良井であった。 一般人がするのと同じように至村に近づき声をかける。 とはいえ、至村の顔色を見て事切れていると判断できたのは、数多くの敵を屠ってきたからであり、葬儀屋として数多くの遺体を見てきたからである。 このまま放置するか否か――この町では人死は珍しくない。 ただの殺人であれば警察の管轄だが、少しでも都市伝説が絡んでいれば事情は変わる。 江良井は至村の死因が何に拠るものか見当がつかないでいた。 「人、殺し……?」 その迷いがあったから――少年と『人面犬』に出遭った。 続 前ページ次ページ連載 - 葬儀屋と地獄の帝王
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「声優の重要性」 とある男女2人が都市伝説と戦っていた。が、カップルとは違う。少し似通った2人。そう、彼らは二卵性双生児。名前は 中人本規(なかひと もとのり)と中人釘実(なかひと くぎみ)。彼らが戦っているのは『首なしライダー』。 本規「まずいねー。これは能力発動しないと…」 釘実「確かに…。やるしかないわね」 (そういうことなら、私に任せるネ!!) 釘実の頭に某ジャンプ漫画の似非中国娘の声が響く。彼女の契約した都市伝説は『釘宮病』。 「フハハハハハハハ!!! お前たち人間が俺に勝てると思っているのか!」 少し噛ませ的な台詞を吐く首なしライダー。 釘実(そうね…。ここは戦闘能力の高い貴方に任せるわ。“K型”) 釘実(K)「ほあたアアアアアアアアアアアアアア!!!」 某似非中k(ryっぽい掛け声を出しながら首なしライダーを蹴飛ばす。『釘宮病』の能力のひとつ、釘宮理恵が中の人をしているキャラの能力の使用である。 本規「ぶるあああああああああああああああ!!!」 突然渋い声になる本規。そして飛ばされてきたライダーを攻撃する。彼の契約した都市伝説は『C.V.若本』。能力は若本ボイスになり戦闘力が上がる、と言うものである。 「なめるなああああ!!!」 が、バイクを器用に使い回避する。そして、ピアノ線を出し絞殺しようとする。しかし、 本規「骨まで砕けろぅぅぅぅぅぅ!」 本規が強烈な一撃を叩き込む。これは流石に避けられない。 釘実(今のうちに…行くわよ“L型”!)「バカバカバカバカバカバカバカァーーーー!!!」 首なしライダーの耳にルイズ(ryの声が響き渡る。そして… 「今のは結構やばかtt…くぎゅううううううううううううううううう!!!」 感染した。首なしライダーが感染したのはL型ウィルス。ルイズ(ryの声や画像から感染する。そして、釘宮病の主な症状『定期的に釘宮ボイスを聞かずにはいられない』。 首なしライダーが感染したのを確認すると、釘実は黙った。これ以上釘宮ボイスが聞けなくなるように。最初のうちはまだ平気だったが、時間が経つにつれ禁断症状が出るようになる。 「う…く、くぎゅうううう…あの、声を…」 禁断症状で身動きが取れなくなった首なしライダー。動けなくなったのを確認し、中人兄妹はその場をあとにするのだった… つづく
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黒服Y 21 スコープに空を舞うサンタを捉える 引き金にかける指にそっと力を入れる スナイパーライフルから銃弾が放たれるが 同僚「やはり当たりませんね」 命中率は芳しくない もともと狙撃は得意でもないし スナイパーライフルを空に向けて撃ったってなかなか当たらないだろう Y「うりゃ」 隣を見るとYが変な掛け声とともに発砲したとこだった 銃口の先をたどって見るとどうやら当たったようだ そして見たことを後悔した 同僚「…あの筋肉の塊は撃ち墜としてもいいんですか? 一応組織の戦力ですが……」 Yがこちらを振り向いて答える Y「逆に聞こう。天使の舞う空、えせサンタが飛ぶ空、アレが犇めく空、1番見たくないのは?」 同僚「……すいません、駆除の続きをどうぞ……」 視線の先では「兄貴」と呼ばれるものが墜ちていく しかも、尻を押さえながら 考えちゃ駄目! 何故あんな格好で落ちて行くのかなんて考えないで! 止まって私の想像力! 思考を止めるために片付けに専念しましょう、そうしましょう 撃っても当たらないのだから撃つだけ無駄ですしね Yなら都市伝説の能力を使って当てることが出来…… 確か以前Yから聞いた都市伝説の能力はオートポインター(カッコ悪いから止めろとは言っておいた)だった 照準がやたら正確になるだけだよ、と彼自身も言っていた そして彼が今構えているのは二連式の猟銃で、装填している弾丸は一粒弾のはず 狙いが正確なだけであんなに遠くの筋肉塊のアレを撃つなんて芸当が出来るのか そもそも射程圏外ではないのか Yの能力が、都市伝説の能力が、明らかに強くなっている? 普段の態度も仕事も相変わらずで、特に変わったことはなかったけれども Y「さ、もう行こうか、同僚。後はあの可愛い天使達が何とかするだろうし」 考えている途中にYの声が割り込んだ 何故可愛いを強調するのだ 同僚「えぇ、そうですね」 何かあったのだろうか それを私には話してはくれないのか それとも話せないような理由があるのか 何かあったという確証があるわけじゃなく、ただの杞憂かもしれない 問いただしても曖昧な事ばかり言って、否定も肯定もせず、あなたはごまかすのでしょうが Y「やっぱり荷物要らなかったでしょ?」 同僚「そうでしたね」 自分達のいた痕跡などを消してYの後を追いかける 前を行くその背中はいつもどおり、少し頼りない感じがした 前ページ次ページ連載 - 黒服Y
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朝、目を覚ましたらベランダに干した覚えのない布団がひっかかっていて、よく見たら教会のシスターさんだった、なんてのはよくある話ではない。 少なくとも、俺はそんな例は一つしかしらない。 ところで、ここはマンションの五階である。近場に、このベランダに飛び乗れるような建物はない。 とすれば、上の階から落ちた人の可能性もあるが、このマンションの住人はほとんどが中学生から高校生である。 学校町と呼ばれるほどに学校の多いこの町に、県外からやってきた生徒達の寮を兼ねているからだ。 ならば、泥棒の可能性だが、修道女姿の泥棒などいるのだろうか。 まあ、いろいろと可能性はあるのだが、俺にはこれが風変わりな泥棒やベランダで寝るのが好きな変人でない事は分かっている。 これは間違いなく、都市伝説だ。 はたして、何の都市伝説なのだろうと眺めているとその修道女と目があった。目があった?おっと、いつの間にか起きていたらしい。 「あら、おはようございます」 「あぁ、はい、おはようございます」 しばらく見つめ合っていると挨拶されてしまった。礼儀の正しい奴である。 「ええと、都市伝説、ですよね」 とりあえず、修道女姿の痴女でない事を確認しておこう。 「はい。『マリアンヌ』と申します」 全く聞いた事のない都市伝説だった。 「ところで貴方は、私を追ってきた契約者さん?」 「朝起きたらベランダにシスターさんがいてびっくりしてる契約者さんです」 えぇ、本当に。心臓止まるかと思ったわ。 「それもそうですね。『教会』がこんな極東まで人を遣すわけがないですものね。あ、でもこの町には『組織』とか言う欝陶しいのがいましたね」 何でも良いが、結局このマリアンヌさんは何故俺の家のベランダにいたのだ。 「あ、眠かったのでベランダお借りしました」 ……そうですか。いや、意味不明だけど。 「ええと、紅茶でも飲みます?」 「おや、良いですね。いただきます」 とりあえず、敵対する必要もないので誘ってみた。 そして、紅茶の葉を取り出していると、急に部屋が暗くなった。電気が切れたとかではなく、ベランダに現れた巨大な黒い犬が原因である。 爽やかな朝日を遮るとは、どういう了見だ。日照権を知らんのか。 「えっと、ワンさん。何かy」 都市伝説っぽい犬に近寄り窓を開け、そこまで言った時、その犬が口を開き、火を吐いた。 「っづあ!?」 そして、 「ぎゃ!?」 その犬が突進するように部屋に飛び込み、俺は部屋の端まですっ飛ばされた。 「やぁっと見つけた」 黒い犬の後から男が一人入ってきてそう言った。一瞬犬が喋ったのかとワクワクしたじゃねえか。ちくしょう。 「あらあら、無関係な人に怪我なんかさせて」 「うん?ああ、尊い犠牲だった」 男は俺をちらりと見て、そう言った。不法侵入の分際でなんて奴だ。……てか、犬が吐いた火で部屋が凄まじい事になってんぞ、おい! 焦げてないのはマリアンヌさんだけってレベルじゃねぇか! 「人の世を守る『組織』として、お前みたいな正体不明の都市伝説を放置するわけにはいかねぇんでな。一人か二人の犠牲は仕方ない」 「正体不明?私はマリアンヌと名乗ったはずですが?」 「そんな名前の都市伝説見つからねぇんだよ!いけ、ブラックドッグ!!」 男がそう言うと、再び犬が火を吐いた。 あー、こりゃ敷金は絶望的だっあっつ、あち、やめぃ! 「んー、どうせ燃やすなら、これくらいやったらどうです?」 マリアンヌさんがそう言った途端、けたたましいベルの音が鳴りだした。そして、 「火事だーー!!!」 何処からか聞こえたその叫び声と、犬の火とは関係なしに発火した部屋から、マンション中が燃えだしたのだと知った。 「な、何を……。っ、ブラックドッグ!!」 男の叫びに反応し、犬がマリアンヌさんに大きく口を開けて飛び掛かる。そして、 「…………は?」 「くぅん?」 空中で静止した。 そして、そのまま、ゴキッと嫌な音をたて、映画「エクソシスト」の子供のように、犬の首が一回転した。 「っぁ!?やめ、っ!?」 犬を見てる間に、男の方も空中に浮かび、静止していた。首は無事のようだったが、男は火の中にいた。 「世の中にはいろいろな契約者がいます。もしかしたら、この戦いを観察している契約者や観察する契約者がいるかもしれません。 とくに『組織』が私の情報を集める為に、見ているかも。と、言うわけで、貴方を惨たらしく殺して戦意を削いでみましょう。 『ボーリィ牧師館』の恐怖しっかりと味わあせてあげますからね」 その後の男は酷いものだった。火であぶられ、指を一本一本折られ、爪をはがれ、部屋の中をスーパーボールのように跳ね回った。そして、消防車が来た頃、 「飽きましたね……」 マリアンヌさんのその一言と共に、窓からゴミのように捨てられた。 「『ボーリィ牧師館』て、イギリス最凶レベルの心霊スポットじゃないですか」 「………………!?」 ごたごたが終わったらしいのでマリアンヌさんに話しかけると、ずいぶんと驚かれた。 「…………あ、生きてたんですね。びっくりしました」 そう言われて、自分の体を見ると、全身火傷に、足と首がおかしな方向に曲がっていた。犬に火を吐かれ、突進された時の怪我だ。痛い。 「あ、どうも。『切れない電球』の契約者です」 能力は不老不死。死なないだけで、普通に痛いし、回復能力が上がるわけでもないので、正直、役に立たない。 「死なないんですか?」 「死にませんねえ」 「それは良いですね。私と契約しませんか?」 「容量足りなてないっす。飲み込まれるんで無理っす」 「では、私の契約者のふりをして生活してくれません? 私、契約者が欲しいんです。一緒に戦い、一緒に生活する。笑いあい、悲しみあい、喧嘩なんかもして、時には恋愛してみたり。素晴らしいじゃないですか契約者! しかし、私は『マリアンヌ』と名乗ってごまかしてみても、正体は『ボーリィ牧師館』。容量の問題で契約しても片端から飲み込んでしまって。 契約者以外だと、うっかり呪いやポルターガイストで殺してしまいますし。その点、貴方は死にません!」 ボーリィ牧師館といえば、確か20以上の幽霊がいた屋敷だ。焼失した今でも幽霊の目撃情報のある心霊スポット。 そんなのと契約したらさぞや強くなる事だろう。その代わり、多くの契約者に狙われそうだが。そして、俺は契約してもないのに狙われるのか。 それは、不登校で引きこもっているよりは楽しそうだ。そんな事を、火事の中、俺を虐めていたクラスメートが助けを求める声を聞きながら考えた。 あ、でも 「一緒に暮らす家が絶賛炎上中なんですが」 「………………あら?」 意外と天然さんなんだろうか。まあ、契約者以外をうかっかりで殺しちゃう人だしな。 そんなこんなで、三日に一回は死にかける俺の新たな生活が始まったのだった。 終 「単発もの」に戻る ページ最上部へ